非モテ。ニート。26歳。夏。ただ写真を加工するだけのアプリのはずだった。だが、このアプリが僕の人生を変えた。
[ストーリー]
想像力。神は何故この力を人間に与えたのだろう。僕はニート。想像力が原因で、会社を辞めた。未確定事項を片っ端から、想像力で埋めていた。会社に来なくていいと言われた。彼女とも別れた。正確には、フラれた。彼女との結婚生活を想像して、子ども何人欲しい?って聞いてみた。出会って2日目だった。それ以来、彼女からの連絡はない。
眠れない。何げなくiPhoneを触る。これこそ、神のデバイスだ。神が世界を創成してから、3つの重要なリンゴが登場した。アダムとイヴのリンゴ。ニュートンのリンゴ。そして、ジョブズ率いるアップルだ。アップルから生まれたiPhoneは、言わば、林檎太郎だ。これから鬼退治に。。。
目が覚めた。iPhoneが鬼退治に行くことを想像してしまった。iPhoneは鬼退治になど行かない。いつも通りApp Storeを眺める。僕はよくコンビニの代わりにApp Storeを利用する。いつも通り。ふとアプリに目がとまった。Bubble Japan?なんだ?想像力が働かない。
写真を加工するアプリのようだ。インストールしてみた。起動してみた。まだ想像力が働かない。写真を読み込む。赤と青のペンで、写真の一部を塗りつぶす。赤は隠す、青は見せる。目標をセンターに入れて、スイッチ。目標をセンターに入れて、スイッチ。目標をセンターに入れて、スイッチ。。。
写真の上に指を走らせる。赤と青。床屋のサインポール。赤が動脈。青が静脈。白は。白はなんだっけ?白は機動戦士ガンダムのホワイトベースか。塗り終わった。あとは、実行ボタンをタップすればいいのだろうか。どうやら、実行する時には「ジャパン!」と叫ばねばならないらしい。僕はおもむろにボタンをタップした。ジャパン!
そこで僕は自らの想像力を遥かに超える現象を目撃する。目の前には、バブリーな写真があった。無数の穴の向こうに元の写真が見え隠れする。隠れている部分はどうなっているのか。僕は湧き出る想像力を抑えることができなかった。もはや、穴の空いていない写真など、ただの穴の空いていない写真だ。
もしも僕が栃木の人間だったら。栃木を青で塗って、ライバル茨城を赤で塗っただろう。これからは、明るい未来を青で塗ろう。消したい過去を赤で塗ろう。きっと、バブリーな人生を送れるはずだ。実行ボタンをタップするたびに、パターンが変化する。僕はボタンをタップし続けた。ジャパン!ジャパン!ジャパン!
もっとバブリーな写真を作りたい。バブルの海に溺れたい。あいにく、僕のiPhoneには機動戦士ガンダムの写真しか入っていない。そうだ。あの写真が使えないだろうか。そう。あの写真だ。パソコンからiPhoneに写真を取り込む。アプリを起動。その写真を読み込む。赤と青。そして。。。ジャパン。
僕の想像力は宇宙になった。